苦しみは苦しみでしかない

高島心理カウンセラー

2018/1/23

先日開催した講座の参加者の方から、「マインドフルネスの実践を重ねて行けば、苦しみはなくなるのですか?」と質問を受けました。
実は、このような質問は結構よく受けるんです。
私はいつも、「苦しい出来事はなくなりません。ただし、苦しいと思うことがどんどんなくなっていきます」と答えています。

事実、苦しい出来事がなくなるわけではありません。
例えば死。
マインドフルネスを実践したからといって死を避けられるわけではありません。
愛する人の死に直面することもあるし、自分の命にもいつか終わりはやってきます。
それは避けられません。

ですが、その苦しみに振り回されなくなっていきます。
正確には苦しみは苦しみでしかないのです。
その苦しみから派生する、感情が厄介なんです。
その派生してできた感情に心が支配され、感情に振り回されるようになってしまうのです。
苦しみに直面した時、「受け入れたくない」という感情が自動的にわいてくるのです。

こういった自動的な反応を起こらないようにしよう、あるいは自分にとって都合のいい反応が起こるようにしようとコントロールすることがマインドフルネスではありません。
コントロールできないものをコントロールしようとするのではないのです。
そうではなく、むしろ、受け入れる。

先程の例だと、「受け入れたくない」という感情をそのまま受け入れる。
「受け入れたくないのも当然だ」とか「受け入れなければいけない」とかといった判断を加えず、
「受け入れたくない」と思っている感情に、ただ気づく。
いい・悪い、正しい・間違っているといった善悪の判断を加えず、そのままにしておく。
これがマインドフルネスです。

マインドフルネスの実践を重ねていくと、出来事(事実)と感情がわけやすくなるように感じます。
また、自己というものが少しずつわかってきます。
出来事をどのように受け止めるか、実はそこに自分らしさが関係しているのです。

 

例えば、会社の企画会議が紛糾している場面を考えてみましょう。
AさんとBさんの意見の対立はもはや感情的なレベルに達しています。
あなたは何とか二人をなだめようとあの手この手を尽くしますが、熱くなった二人は聞く耳を持ちません。

ここで、実際になだめる行動に移る前に、あなたの心の中に「なだめよう」という感情がわいたことに気づいていたらどうでしょう。
「なだめよう」と思うということは、対立はよくないという判断をしていることになります。
これがあなたの価値観だといえます。
仲間割れのような状態はあなたにとって不快なんです。

さらに、対立はよくないという判断を手放したらどうなるでしょう。
感情的に対立している二人が違って見えてきませんか。
会社のために批判されることも恐れずに堂々と自分の考えを主張できる、仕事熱心な人。
こんな風に見えてくるかもしれません。
あるいは、感情的になることでしか仕事の熱心さを現せない能力のない人といった醒めた見方になるかもしれません。

このように、「なだめよう」という感情に気づくだけで、自分がどんなことを大切にしているのかに気づけます。
さらに、出来事(この場合は二人の対立)にもさまざまな見方ができることにも気づけます。

この後の行動を決めるのはもちろんあなたです。
やっぱり対立はよくないとなだめてもいいし、よい企画が生まれるためだと静観してもいい。
あなたが上司であれば、積極的に持論を展開する二人を評価してもよいかもしれません。
いずれにしても、マインドフルになった結果、行動の選択の幅が広がったことがわかります。

「なだめよう」という一つの感情に気づくだけでこれだけのことが起こるわけですから、日常的にマインドフルネスの度合いが高まれば、どれだけのことが起こるか想像いただけるのではないでしょうか。

 

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