こころ塾だより

インナーチャイルドの世話をする

丹下坂心理カウンセラー
高島心理カウンセラー

2018/3/15

前回に引き続き、ネガティブな感情との向き合い方を学びました。
怒りを題材にして。

お母さんが泣く子をあやすように、
私たちは、自らの苦痛に対して
世話をしなければなりません。
  ——ティク・ナット・ハン「抱擁」より

転んで泣いている赤ん坊をお母さんはどうあやすか。
「痛かったね」

そう声をかけ、やさしく懐に抱きしめます。
そして、ありたけの愛情で包みます。
「もう、大丈夫だよ」

怒りをはじめ、ネガティブな感情にはこのように向き合います。
赤ん坊をあやすお母さんになるのです。
「苦しいね」と苦痛をそのまま受け入れます。
苦痛を苦痛ごと抱きしめます。
意識を集中して苦痛を抱きしめます。
「気づいてるよ。もう、大丈夫」と声をかけます。
5分、10分、15分…気持ちが落ち着いてくるはずです。

怒りの対処法として、発散があります。
「大声を出す」
「枕をたたく」
など、体を使って怒りを表に出す方法です。
怒りの対処法としての発散は、多くの心理学者やカウンセラー、セラピストなどが推奨しています。
実際私も、過去の実践心理学講座で、怒りの望ましい解消法として紹介したこともあります。
その時の受講生も、今回のこころ塾に参加してくれていました。

発散にはエネルギーが必要です。
大声を出したり、何かを全力でたたいたりすれば、エネルギーを使います。
腹の虫がおさまるまで続ければ、へとへとに疲れ切ります。
疲れ切っているので、怒りの燃料切れです。
もう怒る気がしません。
では、怒りは消えたのか。

そうではないんです。
怒りは消えたのではなく、ただ疲れ切って怒れないだけなんです。
怒りのエネルギーは消えても、怒りの根は残ります。
エネルギーが消えただけに、取り出しにくい形で、私たちの中により強く根付いてしまうのです。

怒りの対処法としての発散。
私は過去に「怒りは発散して解消するのが望ましい」と紹介しました。
私の間違いでした。

発散することで怒りを解消しようというのは、効果がないどころか、むしろ有害です。
一時的に気分は晴れますが、怒りの根はむしろ大きくなるからです。
その場の怒りを回避して、将来の怒りを大きくしているだけなのです。
苦しむのは自分です。

自分自身で何度も実践して、たどり着いた結論はそこでした。
過去に私が発散を紹介した講座の受講生も、
「根本的な解決にはなっていないように感じるようになってきていた」と答えてくれました。

 

怒りをはじめ、ネガティブな感情には、母親になって向き合うことです。
泣いている赤ん坊をあやす母親です。
泣き止ませようと押さえつける必要はありません(抑圧)。
恥ずかしく思う必要もありません(回避)。
飴玉でも与えて、ご機嫌を取る必要もありません(発散)。

「痛かったね。気づいているよ。もう大丈夫だからね」
あやす母親になりましょう。
 

次回こころ塾は、春分の日の振替で、3/22(木)19:30から開催です。
お間違えの無いようにお越しください。