恋愛における男女心理「しばらく実家に戻ります」編

高島心理カウンセラー

2019/12/17

「しばらく実家に帰らせていただきます」
こう告げるなり家を後にする妻。
子どもの頃、母が見ているテレビでお約束のように出てきた場面です。
これは、現代のテレビドラマでもお決まりのパターンですよね?
そして、テレビの中の出来事ではないというカップルも…。

「しばらく実家に…」は、夫婦関係に危機が訪れる象徴的な場面。
そのまま破局に至るケースもあれば、よりを戻すケースもあります。
何より、一番のポイントは次の一点ではないでしょうか?

夫にとっては、寝耳に水であること。
妻に言われるまで、予想もしていなかった。

このケース、一体何が起きているのでしょう?
 

「しばらく実家に…」を聞く直前まで、夫は意気揚々と生きています。
仕事はきわめて順調。
会社勤めの夫なら、出世も同期で一番という方も多いはずです。
独立している方なら、「さらに会社を大きく」「新しい事業も始めよう!」と次々と拡大していきます。

「そろそろ二人の家を持とうよ。マイホームは…」
なぜか最近浮かない様子の妻に、明るい話題を提供します。
なのに、そんな話題にすらのってこない妻。
夫は、その様子に、違和感を覚えます。
違和感を覚えますが、あまり気にしません。
だって、二人のために、正しく生きている自負があるから。
何より、楽観的なんです。

そこに突然、「実家に…」が来るわけです。
だから、寝耳に水なのは演技なんかじゃない。
本当に、予想もしていないわけです。


それでは、妻の方には何が起きているのでしょう?

妻は寂しい思いをしていたんです。
いつも仕事のことばかりが頭にある夫に対して。

たまのデートでも、合間を縫ってはスマホで仕事の連絡の夫。

「私の存在はどこるあるの?」
こうなると、気分の沈む日々を過ごすことになります。
自信もなく、体調もすぐれないようになります。
これではいけないと思っても、後ろ向きの連鎖は、始まると止まらなくなります。

夫が頑張っていることはわかっています。
わかっているからこそ、苦しくなる。
ダメな自分を申し訳なく思うし、そんな自分を惨めにも感じてきます。
でも、夫の愛をどうしても確かめずにはいられない。

すると、
「大事に思っているに決まっているだろ」という夫の返事。
これが、どこか空っぽな言葉に聞こえます。

本当に大事に思っているなら、どうして二人の時間を大切に過ごしてくれないの?

気がつくと、いつも生き生きと夢の話をしている夫に対して、自分の方は「あれが悪い」「これがだめだ」と世の中への不平・不満ばかりが口をついてきます。

そして、そんなことが繰り返されるうちに、
「いつからこんな自分になってしまったのだろう。もう別れた方がよいのかな…」
そして、冒頭の場面に至ります。
「実家に…」というやつ。


では、夫は本当は何を思い、何を感じていたのでしょう。

もちろん、妻を嫌ってなんかいません。
そして、大切に思っています。
なのになぜ、一緒にいる時間を犠牲にまでして仕事に打ち込むのか。

それは、妻に嫌われたくないからです。
だから、妻ほどの素敵な人にふさわしい自分にならなければいけない。
でも、どうすればふさわしい自分になれるかがわからない。
それで、仕事に打ち込むんです。
成功して、もっと成功して、もっともっと成功すれば、きっと妻が振り向いてくれるだろうと思って(この気持ちは夫本人には全く自覚されていません)。

一方の妻。
夫にかまってもらえないのは、自分が愛されていないからだと勘違いしているのです。
そして、そんな自分を、「魅力がない」、「価値がない」と思い込んでいく。

つまり、
(認めてほしいから)ますます仕事に精を出す夫
(かまってくれないから)ますます自分の価値を感じられなくなる妻

悲しいすれ違いが起きているんです。
そして、努力すればするほど二人の距離は遠ざかっていきます。
成功すればするほど、二人の距離は遠ざかっていきます。
 

それでは、このすれ違いをどうやって防げばいいんでしょう。
それには、まず、どちらか一方がこのすれ違いのメカニズムに気づくことです。
それが、第一歩。
そして、大きな一歩です。
つまり、それくらい難しいことなんです。
自分の本当の気持ちを知るというのは。
自分のこころに気づくというのは。

本当は、二人で気づけるとよいのですけどね。
それこそ、本当の意味で人生のパートナーとなるのですから。


執筆者:カウンセリングMaNa 高島 昌彦