【こころ塾だより】

マインドフルネスとは?

今、この瞬間

今、この瞬間をありのままに受け止め、しみじみ味わうこと———これがマインドフルネスです。
感覚的には、ハッと気づく一瞬の状態。その一瞬一瞬の状態がつながっていく感じです。

例えば歩いているとき、「あれをやらなきゃ。あの人に連絡もしなきゃ」などと考えていませんか?
そうではなく、目に飛び込んでくる草花や乗り物、鳥のさえずり、太陽の暖かさなど、どんなささやかなものでも、出会ったものすべてを見過ごさないようにするのです。

目の前のものに注意を向け、一瞬一瞬を愛おしんで生きると、心の安らぎや生きる喜びがよみがえってきます。そして、折に触れて人生のすばらしさを実感します。

マインドフルネスは、ストレスだらけの日常から自由になるための、手軽にできる、効果的な方法です。習慣化を通して心と体の病気を防ぐ効果も期待できます。

マインドフルネスの効果

  • 気分が穏やかになり、くつろぎが得られる
  • 生きる意欲と力がわいてくる
  • 自信がみなぎり、自分を受け入れることができる
  • ストレス、うつ、不安、慢性的な痛み、中毒症状、免疫力低下などが緩和される
  • 自分、他人、地球へのいたわりが増す・・・など

マインドフルネスのはじまり

アメリカ、マサチューセッツ大学医学大学院教授のジョン・カバットジン博士が同大学にマインドフルネスセンターを起ち上げました。1979年のことです。禅やヨガを学び瞑想を日課としていたカバットジンは、瞑想を病院の治療に取り入れることを思いついたのです。

瞑想と西洋科学を統合した研究と実践は深まり、1990年代にはストレス低減法としてのマインドフルネスは欧米で広く知られるようになり、心の不調や病気の改善、うつの再発防止など様々な効果があることもわかってきました。

今日、欧米では、マインドフルネスを用いた認知療法(MBCT)やストレス低減法(MBSR)は、不安神経症、ストレス、トラウマ、慢性痛、一部のがん、摂食障害、強迫性神経症など、様々な病気の治療に用いられています。日本でも、一部の治療が保険適用となりましたが、実施している病院が非常に限られているのが実態です。

一方で、マインドフルネスは病気の治療だけでなく、あらゆる人に効果があるものだということもわかってきました。グーグルをはじめ、多くの優良企業が採用していることからもそのことがお分かりいただけるのではないでしょうか?

マインドフルネスの実際

今という瞬間をありのままに受け止め、しみじみと味わう。マインドフルネスとは実際にはどのような状態なのでしょうか。ここで強調されるのは、「現在進行中の出来事を、受容的・無批判なまま気づいている」ということです。要素としては、

すべてのことに対して意識的である(自覚している)
意識に上がったことについて、善し悪しの判断をしない

この2つが大切な部分となります。

自覚するすべての出来事とは、体の外側(見る、聞く、触れる等)とともに体の内側(思考・感情・身体感覚・動作等)も含まれます。

お茶をじっくり味わい「ホッとする」気分を味わう。これはマインドフルネスの一部です。「ホッとする」という気分がわいてきたら、その気持ちに善し悪しの判断をつけずに自覚しておく。今という一瞬の出来事に気づいて、そして手放す感覚です。

すでにお気づきの方はいらっしゃるかもしれませんが、マインドフルネスとは「ある・ない」というものではありません。「どのくらいマインドフル」かという程度問題です。
先程、お茶をじっくり味わい「ホッとする」気分を味わうのをマインドフルネスではなく、マインドフルネスの一部と記したのもそのためです。

お茶をじっくり味わう。その一瞬一瞬にすらものすごい量の出来事があります。例えば、お茶を口に含む一瞬。その時見えている景色、聞こえている音、お茶の香り、味、口にお茶が広がる感覚、温度。さらには手に持った茶碗の感触、重さ。背中やお尻、あるいは足の裏がどこかに接しているかもしれません。さらにはその時、何か考え事をしているかもしれません。昨日あった出来事を思い浮かべているかもしれません。それら身体の内側・外側全てのことに気づき、そしてそのすべてに判断をしないというのは、現実的には不可能と言えるでしょう。

ですから、マインドフル(の程度が高いほど)がよく、マインドレス(の程度が高いほど)が悪いといった単純なものではありません。その意味では、マインドフルネスは目的ではなく、手段なんです。

マインドフルネスを体感するごとに、自分のこころの癖に気づくようになる。その心の癖に気づいて、その上でその心の癖のままに生きてもいいし、心の癖を直してもいい。あるいは自然と心の癖が直っていく。人生の幅が広がり、生き方を選択できるようになっていきます。

 

必要なのは実践

実際にマインドフルネスに取り組むには、トレーニングが必要です。それも1度や2度ではない継続したトレーニングです。マインドフルネスの程度の高い人で、継続的な実践をしていない人は一人もいません。
つまり言い換えれば、実践すれば誰でもできるということです。その実践も特別な場所も器具も必要ありません。また、1日に何時間もする必要もありません。5分だっていんです。もっとも実際には、上達するにつれ日常生活の中でマインドフルな時間が増えるので、もっと長い時間マインドフルでいることにはなります。とはいえ、トレーニングとして必要なのは、上達しても短時間で十分です。求められるのは、継続という実践です。

MaNaでは、全ての方がマインドフルネスに取り組めるように、こころ塾~マインドフルネス実践を開催しています。また、マインドフルネスには興味があるがよくわからないという方向けに実践心理学講座「はじめてのマインドフルネス」も定期的に開催しています。