高島心理カウンセラー
2020/9/9
17年間”うつ”を患い、それを克服した私自身の体験から、うつで感じる疲れ、疲労感を手掛かりに
これらを明らかにしていきます。
ずっと薬を飲んでいるのに治らないという方にも参考になるはずです。
実際にうつを克服した人間の実体験ですから。
うつを患っていたほとんどの期間で疲労感を感じていました。
特にうつの症状の悪い時ほど、その感覚は強かったように思います。
朝、目覚めた瞬間に、もう疲れていました。
寝てばかりもいられないので、何とか起き上がりソファーに。
背もたれにどっかり身を預け、ただボーっとする。
何もしていないのですから、疲れるわけがない。
疲れるわけがないのですが、実態としては疲労感を感じている。
感じているどころか、その疲労感は高まるばかり。
何もしていないのにものすごい疲れです。
うつというと精神的な病であるため、気疲れのようなものを想像されるかもしれませんが、そんなものではありません。
全身ではっきりと感じる疲労です。
体中が疲れているんです。
飛行機や車など、乗り物に長時間乗ったときに感じる疲労感が近いかもしれません。
それも数時間ではありません。
何日も何日も狭い乗り物に乗り続けたような感覚です。
頑張ってソファーに2時間ほども座ると、もう限界でした。
私の場合、背中や特に首のあたりがつらくなってたまりませんでした。
2時間ほどただボーっとソファーに座り、大きなため息をついた後、
「ああ、疲れた」
と言ってまた布団に戻る。
一緒に暮らしている家族は、それは呆れたことでしょう。
「ただ座っていただけでしょ⁉」と。
ですが、私としては本当にどうにもならないほどの疲労感だったのです。
この疲労感の正体は何か。
マインドフルネスの実践を続けるうちにその正体がわかってきました。
マインドフルネスの実践を続けていくと、感情が体に与える影響がわかります。
正確には感情が体に影響を与えるのではなく、まず体感覚があって、それを感情として意識していることになります。
このあたりはNLPを始め、心理学や脳科学で扱われる部分ですが、瞑想などマインドフルな実践を続けていくと、より体感しやすくなる部分でもあります。
例えば怒りの感情の場合。
今思い出しても頭にくる、そんな場面を思い出してみてください。
ずっと過去の出来事でも構いません。
その場面を思い出し、その相手の顔を思い浮かべてみてください。
どうです?
胸のあたりが熱くなったり、鼓動が高鳴りったりしていませんか?
頭に血がのぼる感覚やおなかがふつふつとする感じを覚える場合もあるかもしれません。
胸がのあたりが締め付けられる感覚を感じている人もいるかもしれませんね。
そして、瞬間的に呼吸が止まります。
息を吐き切って止まるのではなく、短く吸って止まります。
それら体感覚を、私たちは「怒り」の感情と呼んでいるということです。
ちなみに、息をゆっくり吐きながら怒ることはできません。
怒りを表出するときは、短く吸って瞬間的に止めた息を一気に吐き出しながらになりますから。
一方で怒りを表出しないとき、
つまり怒りを抑圧する場面では、首や肩の筋肉が緊張します。
止めた息を一気に吐き出す代わりに、首や肩などの呼吸筋群を緊張させているわけです。
怒りだけではありません。
悲しみや不安、後悔、喪失…あらゆる感情は体感覚ですから、感情が起こるたびに体には身体反応が起きています。
さらに、感情を表出せず抑圧する場合にも、筋肉の緊張という身体反応が起きているわけです。
なぜ感情と体感覚の話をしているかというと、
うつで感じる疲労感は、この感情という体感覚が原因だからです。
うつがひどくなると医師から休養を進められます。
私も始めは半月ほど仕事を休み、それから年単位での休職、そして退職と経験しました。
そうして仕事を休んで自宅療養しているとき、本当に休養できていたのでしょうか。
確かに自宅のソファーで何もせず、ボーっと座っていました。
家事もせず、読書もせず(しようと思う気力もありませんでしたが)、テレビがついていたとしても、じっくり見るのではなく、ただ眺めている感じ。
そうしてただボーっと座りながら、ふと時計が目に入る。
「もう9時。みんな働いている時間だ…」
すると、
「なのにおれは自宅にいて何をしているんだろう」
窓から日が差しているのに気づく。
「いい天気…」
すると、
「こんな天気のよい日に家にこもって、おれは何をしているんだろう」
新聞の日付を見て、
「今日は火曜日か…」
すると、
「平日の昼間に仕事にも行かず、一体おれは何をしているんだろう」
テレビからはとある職人の映像が流れている。
「この職人は寝る間も惜しんで仕事しているのか。偉いなあ…」
ここでも、
「なのに俺は昼間からパジャマも着替えもせずにただ座ってる」
働くべき時間に仕事をしていない罪悪感
実は自分は単にサボっているだけなのではないかという自己への不安感
周囲からそう見られているのではないかという怖れ
いつになったらよくなるのだろうという焦燥感
もうよくなることはないのではないかという絶望感
そして、それらの感情を表出せず、何も感じていないかのように抑圧している。
確かに、起床後ただソファーに座っているだけでした。
傍から見たら、何もせずゆっくり体を休めているように見えたでしょう。
自分でもそう思っていました。
しかし、実際には何かを見て、聞いて、感じて、そして思い出して…
感情が思考を呼び、その思考がまた感情を呼び、その感情がさらに感情を呼び…
感情は体感覚ですから、怒りや不安、後悔、あきらめ、恥といった感情がわくたびに、身体反応が起こっていたことになります。
わいてくる感情のほとんど全ては、いわゆるネガティブなものですから、起きている身体反応も偏りがあるわけです。
方向としては当然リラックスではなく、緊張です。
さらにうつのときには感情を表出せず抑圧する傾向にありますから、そのためにさらに身体的に緊張が増すことになります。
(一方で、一度感情を表出しだすと止めどなくなる場合もあります。うつによる情緒不安定の他に、抑圧し続けることで感情があふれんばかりになっているという側面もあるでしょう)。
結局のところ、休養などできていないのです。
確かにソファーに座ったままで体は動かしてはいませんが、”こころ”は動き続けています。
過去の後悔、未来への不安、今あるものへの執着と嫌悪
感情がわくたびに、そしてそれを抑圧するたびに、がちがちに体は緊張していったのです。
感情のループ
これが、うつの疲労感の正体です。
ですから、いくら体を休めても疲れが取れないわけです。
そればかりか、休養しても症状がなかなかよくならないことから、自分を責めるなどして、ますます症状を悪化させているともいえるでしょう。
マインドフルネス認知療法(MBCT) がうつや不安・摂食障害を改善するメカニズムも、「今、ここ」に意識を向けることで、感情のループからの脱却を行っていると解せば、理解がスムースでしょう。
何より、私自身の実体験がそうですから。
感情、それもネガティブな感情の連鎖がうつの疲労感を生んでいたことがご理解いただけたことと思います。
それでは、このネガティブな感情の連鎖をどのように断ち切ればよいのでしょう?
怒りがわいたときに、怒っていないフリをすることはできます。
落ち込んだときに、平気なフリを装うこともできます。
そうやってうつの人間は戦っています。
がんばってはいるんです。
ですが、それは行動を変えているにすぎません。
抑圧しているのは行動なんです。
感情は、そもそも抑圧できていない。
だって、落ち込んでいないフリはしていても、落ち込んでいるのだから。
そして、残念ながら意志の力で感情を操作することはできません。
いくら落ち込まないようにしようと思っても、何かあると
「ああ、なんて自分はダメなんだ」
と自動的に感情はわくものだからです。
通りの向こうにあなたの知り合いがいるとします。
そして、あなたはその人に声をかける。
なのに知り合いは、こちらを見ずにそのまま歩き去る。
そんな場面を想像してみてください。
この出来事をどのように受け取る(認知)かで、感情が決まります。
例えば、「聞こえているのに無視された」と受け取るとどうでしょう。
「失礼な奴だ!」と怒りの感情がわいたり、「ああ、自分は嫌われているんだなあ」と悲しみの感情がわいてくるはずです。
一方で、この出来事を「あれ?聞こえなかったのかな」と受け取るとどうでしょう。
「もっと大きな声で呼びかけよう」と気持ちが高まるかもしれませんね。
それでは、「あの人は、こちらの声も耳に入らないくらい思い詰めているんだなあ」と受け取ると?
今度は、「大変だろうなぁ…」と同情やいたわりの気持ちがわいてくるのではないでしょうか。
このように、同じ出来事であっても、いろいろな感情がわきます。
カギは、受け取り方。
受け取り方(認知)が変わると、自動的にわいてくる感情が変わる
どんな感情がわくかを決めているのは受け取り方なんです。
そもそも、意志や努力でどうにかなるものではないということがご理解いただけたでしょうか。
そして、「うつ」のときというのは、この受け取り方が極端に偏っているのです。
すべてがネガティブな感情を生むような極端な受け取り方に。
なおすべきは、受け取り方(認知)なのです。
欧米を中心に、これらの心理療法がうつ病治療に用いられ、成果を上げています。
認知療法のように、受け取り方(認知)を直接扱うものから、対人関係療法のように、結果的に認知が変わるものまで、様々な療法があります。
どの療法が優れているというのはありません。
結果が出るならどの療法でもよいのです。
直接であろうと間接であろうと、ともかく認知が変わればよいのですから。
私の場合は、マインドフルネス認知療法がきっかけとなりました。
その後、認知療法や対人関係療法のおかげで、さらに楽になっていきました。
様々な療法に親しんだことが、結果的に再発を防いだのかもしれません。
失恋すると人は落ち込みます。
そして、いつしか立ち直って行きます。
時間はかかるかもしれませんが、その時間が自然と傷を癒してくれます。
薬を飲んでもうつが治らない
長年うつを患っている人というのは、その意味では毎日、もしかすると毎秒のように失恋していると捉えるとわかりやすいかもしれません。
傷が癒える間もなく、次々と落ち込んでいるんです。
誰かから連絡が来れば、上手に対応できなかった自分を責め…
誰からも連絡が来なければ、自分なんていてもいなくてもどうでもよい存在なんだと落ち込み…
あらゆるすべての出来事が落ち込む材料になります。
いくら元気の出る薬を飲んでも、飲んだ端から落ち込んでいる。
変えるべきは、ネガティブな感情を生む受け取り方(認知)にあるんです。
変える方法は様々にあります。
ともかくその方法に出会うことです。
成果を感じれば、継続的に取り組んでいけるでしょうから。
諦めずに一歩を踏み出すことをお勧めします。
執筆者:カウンセリングMaNa 心理カウンセラー 高島 昌彦
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ストレスになる事象が起きた時、状況・感情の度合い・自動思考に整理すると必要以上に心配や不安が少なることがわかりました。
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実際にカウンセラーの前で演じてみると、自身と悩みに距離が生まれました。
そして、孤独感の角度を変えて見つめることが出来ました。
結果、マイナスな感情や思考がじんわりと消えてゆきました。
Q4. その他、私へのメッセージがありましたら、ご自由にご記入ください。
高島さんに励まされて、初めて「自分でうつを克服するんだ」と気付きました。
そして、カウンセリングを重ねて自信が付きました。
今後も気分に波はあると思いますが、一人で抱え込まずに、周りの人の手を借りて、充実した人生を憶いたいです。
この稚拙な文書は私の自分自身の苦しかった時期を、敢えて前向きに振り返る為に記載しました。
語彙力が低く、お恥ずかしい次第ですがお許しください。
【カウンセリングMaNaに「たどり着く」までの経緯】
私は大学卒業後、上場企業で20年以上、日々仕事中心の生活を送ってきました(管理職も務めました)。
しかし一昨年、ある上司と同僚との対人関係のトラブルから極度の睡眠障害と摂食障害(過食症)を伴う不安抑うつ症状を発症し、医療機関(精神科)を受診しました。しかし十分には回復せず、それに伴い仕事上のパフォーマンスも日を追って低下、こころの状態もさらに悪くなるといった悪循環に陥っていきました。
特に極度の睡眠障害に苦しみ、また中途覚醒した際には自殺念慮を抱く様になり、職場に出勤する事さえも出来なくなりました(自宅に引きこもって過ごす時間が長くなっていきました)。その様な状況の中、カウンセリングMaNaのホームページに、高島カウンセラーご自身がうつ病で長期間苦しまれ、それを克服された経験がある事を拝見し、藁をも掴む思いで対面カウンセリングをお願いしました。
【カウンセリングMaNaでの出会いと私の変化】
対面カウンセリングで、私のこころが苦しい状況に陥った背景、経緯と現状について深く傾聴していただいた上で、毎回私のこころの状態に合わせ様々な対処法(ワーク)やマインドフルネスの手法についてご教示いただき、それらを日々実践していきました。
それに伴い次第にこころが穏やかになり睡眠障害と過食症が徐々に改善、筋力トレーニングが行える程に意欲が回復し、30kg以上減量にも成功(過食症でピーク時には100kgを超えていました)。妻が驚くほどに心身共に回復していきました。
またこころ塾、続いてBeing会に参加、高島カウンセラーと丹下坂カウンセラー、参加者の皆様とこころと向き合うワークをご一緒させていただきました。
こころに余裕が生まれると共に、これからの人生においてぜひとも就業したいと願う職種を見つける事が出来、勤務していた企業を退職、この秋から違う土地に移り資格取得のための準備を進めています。
【これからの私について】
カウンセリングMaNaの対面カウンセリングは自らのこころと向き合う事を通じて前向きに物事を捉え、家族や友人、職場の上司や同僚とより良好な関係に繋げられる様に、カウンセラーに支援・アドバイスを頂きながら試行する場であり、Being会は参加者の方達に刺激をいただきながら共に考え、研鑽させていただく所であると私は感じました。
高島カウンセラー、丹下坂カウンセラー、真摯にご自身のこころと向き合われているBeing会の方達との出会いは私の人生の大切な糧となっています。
カウンセリングMaNaでお会いした皆様からいただいたご厚誼に深謝しております。
またいつか良い顔をして再会できます様に、人生の新たな目標に向かって一日一日を大切に過ごしていきたいと考えています。
担当心理カウンセラーより
初めてお会いした日、それはそれは苦しい状況でしたね。
よくここまで回復なさいました。
前を向き、そして実際に前に歩み始めているHさんの勇気に敬意を表します。
伝えたことは必ず実践なさっていましたね。
そんなHさんの努力が実を結んだわけです。
私はきっかけにすぎません。
お互いよい出会いになりましたね。
さらなるご活躍を期待しております!
心理カウンセラー 高島 昌彦
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