【心身の不調】

大人の発達障害|なぜ大人になるまで気づかずに?

カウンセリング事例も紹介

心理カウンセラー
高島 昌彦


2022/02/16


カウンセリングMaNa 心理カウンセラーの高島昌彦です。
 

  • 空気が読めない
  • コミュニケーションがうまくいかない
  • 忘れ物やミスが多い

このようなことでお困りの方。
あるいは、ご家族や職場にそのような人がいて、やはりお困りの方がいることと思います。

それは、もしかすると、発達障害かもしれません。
 

そこで本記事では、

  • 「自分は発達障害かもしれない」​

​と悩んでいる方や、

  • 「身近に、気持ちの通じにくい人がいる」
  • 「家族や職場に発達障害かもしれない人がいるが、本当にそうなのか?」
  • 「発達障害の人とどのように接すればよいのか」

​とお悩みの周囲の方向けに、大人の発達障害の概要や、なぜ大人になるまで見過ごされてきたのかをご説明します。

あわせて、症状や特徴、相談先や対処法、心理カウンセリングの事例についてもご紹介していきます。
 


 

目 次

1.大人の発達障害とは?

2.なぜ大人になるまでわからない?
  2-1 発達凸凹という「特性」
  2-2 「特性」と「環境」の相互作用
  ①特性が「強み」に
  ②特性が「生きづらさ」に
  ③特性が「ただの個性」に
  2-3 大人になるまで発達障害が見過ごされてきた理由

3.新しい診断基準
  3-1 基準は、「特性」+「困っているか」

4.困っているのは誰か?

5.発達障害の特徴・チェックリスト
  5-1 自閉スペクトラム症(ASD)
  5-2 注意欠如・多動症(ADHD)
  5-3 限局性学習症(SLD)

6.グレーゾーンという問題
  6-1 グレーゾーンとは?
  6-2 大人の発達障害が増えている?
  ①発達障害が知られるようになった
  ②診断基準が変わった
  ③社会が変わった

7.大人の発達障害理解のおすすめ本
  7-1 大人の発達障害 グレーゾーンの人たち
  7-2 マンガでわかる アスペルガー症候群の人とのコミュニケーションガイド
  7-3 「大人のADHD」のための段取り力
  7-4 職場にいるメンタル疾患者・発達障害者と上手に付き合う方法

8.「発達障害かも?」とお悩みの方の相談先・対処法
  8-1 病院
  8-2 就労支援機関
  8-3 心理カウンセリング

9.発達障害の人との接し方でお悩みの方の相談先・対処法

10.当社の事例・お客様の声
  10-1 「否定も、過度な肯定もない、絶対的な安心感!」
  10-2 「カウンセラーさんの力って凄い!」

11.まとめ

大人の発達障害とは?


本人も、そして周囲も、普通の人、いわゆる定型発達だと思って生きてきた。
だけど、どうも人と違う。

具体的には、

  • 仕事でミスが続いてしまう
  • 人間関係がうまくいかない
  • なぜ失敗するのかわからない
  • 同じような失敗を繰り返す
  • 相手を怒らせてしまう
  • 周囲から自分勝手といわれる

このような場合、もしかすると「大人の発達障害」かもしれません。
あなたも、「大人の発達障害」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
 

では、大人の発達障害とは何なのでしょうか?

そもそも、どうして大人になるまでわからなかったのでしょうか?
そして、本当に発達障害なのでしょうか?
 

なぜ大人になるまでわからない?

発達凸凹という「特性」


わかりやすくするために、身長を例にして、発達障害を考えてみましょう。

日本人女性の平均身長は、157~8cmくらいです。
ですから、150㎝ほどと小柄な方もいれば、170㎝と長身の方もいるわけですね。
 

では、190㎝となるとどうでしょうか?
 

平均と比べ、極端に高いですよね。
 


このように、平均から大きく離れている性質、つまり発達の凸凹のことを「特性」といいます。
そして、こういう特性を持っている方を発達障害というのです。
 

ですから、発達障害の方は、定型発達の方と違い、

  • ふつう、そうは捉えないだろう
  • 言わなくても常識でわかるでしょ?
  • なんでそんなに~過ぎるんだ?

ということが起こりがちです。

特性ゆえに、「ふつう」とか「常識」といったところと大きくかけ離れてしまうわけです。
 

このことを、「空気が読めない」で考えてみましょう。

場の空気を読み違えるという体験は、多かれ少なかれ、誰もが経験するものでしょう。
ところが、ほとんどいつも場の空気を読み違えるとしたら?

それはもしかすると、発達障害の特性が高いのかもしれない。
このように、考えます。
 

「特性」と「環境」の相互作用


ここで一つ気をつけたいのは、発達凸凹という特性があるからといって、必ずしも困るわけではないということです。
 

特性が「強み」に


たとえば、この身長190㎝の女性が運動神経がよかったら、どうなるでしょうか?

調べたところ、日本代表の女子バレーチームにすら、190㎝の選手はいません。
ですから、もしかすると、彼女は日本を代表するプレーヤーになるかもしれないのです。

こうなると、「背がとても高い」という特性は、むしろ強みになりますね。
 


「空気が読めない」という特性であれば、みんなが物怖じして口を開かないような場面でも、率先して意見を言うことができます。
危機管理室にはうってつけの人物かもしれませんね。
 

周囲からも、

  • 勇気のある人
  • 気骨のある人
  • 誠実な人

として、尊敬のまなざしで見てもらえるかもしれません。
 

実は、実際に恋愛では、「空気が読めない」という特性が役立つ(役立ってしまう)ことが起きやすいのです。

「空気が読めない」ため、相手の微妙な心の動きがわかりません。
ですから、相手が多少引いていようが構うことなく、「愛している」という思いを伝えます。
それも大胆に。

言われる方からすると、熱烈に愛されているのを感じても不思議はないでしょう。
婉曲に断っても、それでも変わらず「愛している」と真剣に伝えてくるのですから。

相手の一貫した姿勢に、「こんなにも自分のことを想ってくれている」と、他の人にはない、真実さと真剣さを感じてしまうのです。
 

もう、お気づきの方もいるかもしれませんね。
これが、カサンドラ症候群のはじまりです。

<関連記事>カサンドラ症候群とは?原因・対処法・カウンセリング事例紹介

特性が「生きづらさ」に


さて、再び、先ほどの身長190㎝の女性に登場してもらいましょう。
今度は身長190㎝で、そして、とても運動が苦手だとします。


この彼女が、スポーツの強豪校に在籍していたらどうなるでしょうか。

全日本にもいないような高身長ですから、バレーやバスケは言うに及ばず、ハンドボールやテニス…
多くの部活から引っ張りだこになることでしょう。
 

でも、運動が苦手です。
すると、どうなるでしょうか?

「ただ大きいだけ」
そんな陰口を叩かれ、すっかり委縮している彼女が目に浮かんできますね。
 


身長が平均的であれば、期待されることもなく楽しい学校生活を送れたかもしれない。
なのに、身長が高いばかりに期待されてしまう。

高身長という特性があだになって、生きづらさになってしまうのです。


「空気が読めない」特性であれば、たとえば上司が変わるとき。
以前の上司が直言を歓迎してくれていたケース。
ところが、新しい上司が心の狭い、ワンマンなタイプだったら?
 

以前は、意見を述べれば述べるほど認めてもらえていた。
なのに、今度はむしろ怒られるわけです。
 

「ふつう」は、わかるのです。
「今度の上司は、『イエス』といっておいた方がよいな」と。

ですが、特性があるため、相手の不機嫌はわかっても、どうして不機嫌になるかがわからない。
わからないので、これまで成功してきた方法(意見を述べる)をがんばって繰り返す。

こうして、がんばっているのにうまくいかないという悪循環に陥ってしまうのです。
 

特性が「ただの個性」に


さて、再び190㎝の彼女。
今度は、彼女が最先端の科学施設で、研究にのめり込んでいると想像してみましょう。
来る日も来る日も、大好きな研究に明け暮れている。
 


いかがでしょうか。


大きなサイズの服や靴がなかなか手に入らない、といったことはあるでしょう。
あちこち、よく頭をぶつけているかもしれません。

一方で、誰も届かないような高い場所にある本や研究キットを、脚立も使わずにひょいと取ることができるなど、背の高さが役立つ場面もあるでしょう。


いずれにしても、高身長なのが、強みにも生きづらさにもなっていない。
大好きな研究に没頭する彼女にとって、背の高さという特性は、人生に大きな影響を与えていなそうですね。
 

今回の例は、「空気が読めない」の特性でも、そのまま当てはまるでしょう。
一人、または特性を受け入れてくれるメンバーで、大好きな研究に没頭できるのなら、その特性は、ちょっと変わった個性として生きていけますね。


このように、どのような環境に身を置いているのかによって、特性による困り感に違いが生じてくるのです。
 


 

大人になるまで発達障害が見過ごされてきた理由

  • 空気が読めない
  • コミュニケーションがうまくいかない
  • 忘れ物やミスが多い

このような特性のある方には、子どもの頃から集団になじめないということが起こりがちです。
そのため、何とかして周囲に合わせようと無理をして、苦しい思いをなさってきた方も多いでしょう。
いじめを受けた経験のある人も少なくないかもしれません。

それなのに、どうして大人になるまで発達障害を疑われなかったのでしょうか。
 

それは、多くの場合、学校、そして家庭という環境により、特性が見過ごされてきたことが考えられます。

なぜなら、学校では、決められた日課に沿って生活し、与えられた課題をこなしていくことが求められます。
そして、求められる課題をこなしていれば、多少人付き合いが苦手であっても、あまり問題にはなりません。

ある程度勉強ができれば、多少場違いな行動があっても、先生や親がフォローしてくれるでしょう(発達障害と知的障害は別のものです。発達障害があってIQが平均以上に高い方もたくさんいます)。

「○○さんは、~な人だから」と。

家族や先生、仲のよい友だちといった限られた人間関係の中。
しかもそれが子どもであればなおのこと、発達障害の特性とは気づかれずに、「個性的」ということで受け入れてもらいやすいのです。
 


それが社会人になると一変します。

上司、部下、同僚、お客、スタッフ、取引先…
人間関係は複雑になり、さまざまな立場の人と関わらなければならなくなります。

また、仕事においても、ただ指示を待つだけではなく、自ら計画を立てたり、主体的に判断、行動していくことが求められます。

「本音や建前」も当たり前に使いこなすことを求められるでしょう。


こうした環境の変化が、これまで現れてこなかった発達障害の特性が浮かび上がらせます。
特性が、生きづらさとなるのです。

 

また、発達障害自体が、最近になって知られてきたということもあります。
これまでは、その特性があるために起こる失敗や困難を、本人の努力不足や親の育て方のせいにしがちでした。

現在でもその風潮は残っていますね。
 

そんな誤解の中で、自らの特性や対処法を学ぶこともなく育ってきた。
だから、社会に出てがんばって働いているのにうまくいかない。

努力してもうまくいかないということを繰り返し、深く傷ついてきた。
そしてようやく「発達障害」という言葉に出会い、診断を受ける。
そんなケースが少なくないのが、大人の発達障害の現実です。


 

新しい診断基準

基準は、「特性」+「困っているか」


発達障害は、比較的新しいカテゴリーであり、診断基準も時代によって変遷してきています。
具体的には、2013年のDSM-5(米国精神医学会による「精神疾患の診断・統計マニュアル」)以降、発達障害の特性の他に、「本人がどの程度困っているのか」も大切にされるようになりました。

ですから、特性があるだけで診断に至るわけではないのです。

たとえば、身長が190㎝という「特性」があっても、むしろその特性を活かしてスポーツの世界で大いに活躍しているなら、無理に発達障害と診断する必要はないという考え方です。

当然といえば、当然の考え方ですね。
 

困っているのは誰か?


ここまで、大人の発達障害の概要をみてきました。
これから、その特徴や対処法などをご紹介していきますが、その前にもう一つ大切なことがあります。

それは、困っているのは誰か?ということ。
「ふつう」といわれる平均的な性質から大きく離れている「特性」があることで、誰が困っているのかということです。
 

具体的には、次の3つのケースがあります。

  • 1
    (特性のある)本人が困っている
  • 本人も周囲も困っている
  • 周囲だけが困っている


③については、発達障害特有のことでしょう。
発達障害の人の言動によって、親しく関わる人に心身の不調が起こるカサンドラ症候群という症状もあります。

<関連記事>カサンドラ症候群とは?原因・対処法・カウンセリング事例紹介


いずれにしても、あなたが困っている人であれ、困らされている人であれ、

  • 空気が読めない
  • コミュニケーションがうまくいかない
  • 忘れ物やミスが多い

これらの出来事が、性格や不注意のせいなのか、それとも生まれ持った特性(つまり発達障害のせい)なのかを知るのは大切なことでしょう。

なぜなら、適切な対処法を知ることができますから。
何より、受け止め方が変わるはずです。

「なんで私は…」「なんであいつは…」
と感じていたものが、
「○○という特性があるから…となるのか」
と納得感をもって感じられるようになりますから。
 


 

発達障害の特徴・チェックリスト


発達障害には、いくつもの分類があるのですが、その中でも代表的なもの。
特に大人の発達障害に関係の深い3つを紹介します。

それぞれの特徴が、そのままチェックリストにもなります。
当てはまる数が多い場合は、その傾向が高いかもしれません。
ご自身や周囲の人など、気になる方の発達障害の傾向を知る意味でもご活用ください。
 

自閉スペクトラム症(ASD)


社会的なコミュニケーションや他の人とのやり取りがうまくできない、興味や活動が偏るといった特徴があります。

自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群、高機能自閉症といった呼び方をされることもあります。


ASDは知的障害とは関係ありません。
ですので、知的障害を伴っていない場合は、子どもの頃は学業成績や生活態度などにも問題がみられず(むしろ優秀な方もたくさんいます)、診断や支援を受けないまま大人になることが多いといわれています。

また、人とかかわりたいのに、うまく付き合えないことから、孤立感や疎外感に苦しむ人もいます。
一方で、人間関係がうまく取れていないことにまったく気づかない人もいます(上述③「周囲だけが困っている」ケース)。
 

大人のASDには、以下のような特徴があります。

  • 場の空気を読むことが難しい
  • 暗黙のルールがわからない
  • 相手との適切な距離感がわからない(不自然に馴れ馴れしい or よそよそしいなど)
  • 言葉通りに受け止めて、たとえ話やあいまいな表現、冗談などが通じない
  • 自分の感情や考えを人に伝えるのが難しい
  • 言葉の理解が厳密すぎたり、使い方やイントネーションが独特なところがある
  • 生活のパターン(場所・時間・行程など自分の中のルール)に強いこだわりがある
  • 興味関心が狭い、あるいは偏りが大きい
  • TPOに応じたふるまいや行動、言葉遣いが苦手
  • 急な予定変更を受け入れられない、混乱する

注意欠如・多動症(ADHD)


「不注意さ」や「多動性」、「衝動性」が特徴です。

その特性のため、仕事や家事でケアレスミスや物忘れが多かったりします。
また、しばしば約束の時間に遅れたり、約束を忘れたり、締め切りに間に合わなかったりすることもよくあることでしょう。

成長するにつれ、子どものときに見られた多動性や衝動性は目立たなくなっていきます。
一方で、待たされた時などにイライラして落ち着かなかったり、人の話を最後まで聞くことができず、さえぎって一方的にしゃべってしまったりするような形で現れたりします。
 

ADHDの大人は、本人の人間性や知能などに問題はないのに、社会適応性が悪かったり、親密な人間関係の持続が困難になったりすることが多いので悩むことになりがちです。

そのため、自尊心が低下して、うつや不安の状態になりやすいなどの二次障害が生じがちです。
 

よくある困りごととして、以下のような特徴があります。

  • 気が散りやすくて集中が続かない
  • 忘れっぽい
  • 物事の順序だてが苦手
  • 整理整頓が苦手
  • 時間や締切に間に合わせて行動するのが難しい
  • 落ち着きがない
  • カッとなりやすい
  • 思いつきで行動する
  • 人の話に割り込んでしまう

限局性学習症(SLD)


知的な障害はないのに、「読み」、「書き」、「算数(計算)」など特定の課題の学習に大きな困難がある状態のことを指します。
これまでは、学習障害(LD)と呼ばれてきました。
 

「マニュアルを読む」、「メモを取る」、「簡単な暗算をする」といった、大人であれば当然できるだろうと思われる作業が、明らかに低いレベルまでしかできません。
ですから、仕事や日常生活で、いろいろと支障が起こります。

子ども時代より苦手意識があったものがさらに大きくなるため、自己評価の低下や自信のなさから、うつ病などを発症(二次障害)するケースもあります。
 

SLDの特徴としては、

  • 文字や単語、文章を読むときに正確でなかったり、速度が遅い
  • 読み間違えたり、ためらいながら読み上げる
  • 読んで意味を理解することが難しい
  • 文字の一部分を付け加えたり、入れ忘れてたり、置き換えたりすることがある
  • 文法や句読点を間違える
  • 段落ごとに内容がうまくまとまっていない
  • 数字や計算が苦手
  • 暗算が苦手
  • 数を使って推論することが難しい

グレーゾーンという問題

グレーゾーンとは?


発達障害の診断基準としては、DSM-5やICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)という明確な基準があります(2022年4月よりICD-11)。

ですが、ではどの程度だと発達障害といえるのかについては難しさがあります。


たとえば、冒頭の日本人女性の身長の例。

平均身長は157㎝と示せても、では何㎝以下であれば低すぎるのか? または、高すぎるのか?
客観的な基準というのは、なかなか示せませんよね。
 


ちょうど上の図のグレーの領域のように、グレーといっても、いろいろなグレーがあります。
どこまでがグレーで、どこからが白か。
あるいは黒か。
はっきりとした境界は示せませんよね。

それと同じように、どこまでが普通(定型発達)でどこからが発達障害なのか、明確には示せないのです。
 

ちなみに、上の図のように、あいまいな境界を持ちながら連続している様子を『スペクトラム』といいます。
そうです。
ADS=自閉スペクトラム症のスペクトラムです。
 

大人の発達障害が増えている?


教育現場では、「発達に課題を感じる子が最近増えている気がする」という声を耳にします。
実際に、ADSと診断される人の割合は20年前の10倍以上と報告されています。

生まれつき生じる障害が、どうして短い期間にこれほど増えたのか?
これは、

1.発達障害が知られるようになった
2.診断基準が変わった
3.社会が変わった

大きく、この3つが関係していると考えられます。
 

発達障害が知られるようになった


2005年に発達障害者支援法が施行されました。
それにより、それまであまり知られていなかった人たちにも発達障害が広く認知されるようになりました。

特に、普通学校の教員に発達障害の知識が広まると、かつては「わんぱくな子」「落ち着きのない子」などとされてきたような子どもたちが、発達障害なのではないかといわれるようになったのです。
保護者に対して「発達障害の可能性があるので病院を受診してみてはどうか」と勧める先生も増えたことでしょう。

また、発達障害に関する書籍も格段に増えました。
インターネット上にも情報が溢れています。

ですから、自分の子どもは周囲の子どもたちとどこか違うと感じたときに、以前に比べ格段に情報にアクセスしやすくなったといえるでしょう。
 

そして、次第に大人の発達障害も知られるようになってきたのです。
 

診断基準が変わった


DSM-5以降、症状の軽い状態から重度の状態までをスペクトラム(連続性)としてとらえるという概念に統一されました。
先ほどのグレーの図ですね。

このため、これまでは障害とみなされなかったような軽症例も、発達障害と診断されるようになってきました。
 

社会が変わった


かつての日本は、今よりもっと社会が小さいものでした。

たとえば、大工という仕事で考えてみましょう。
昔は、棟梁がいて、職人がいて、見習いがいる、という社会でした。

毎日、同じメンバーが顔を合わます。
毎日同じメンバーで、材木を削って、くぎを打って、工具の手入れをして、そして片づけをする。
毎日が同じ作業ということの方が多かったでしょう。

集団のルールは、棟梁のルールです。
その社会では、棟梁のいうことが正しいことなのです。

ですから、とにかく棟梁のいうことに従っていればよかったのです。
 


それが近年は、大工の世界も様変わりしました。
おしゃれな建築会社でないと、住宅も売れません。

また、大きな会社では、人事異動や転勤もあるでしょう。
上司が変わると、ルールだって変わります。

仕事も毎日同じというわけにはいきません。


たとえば、売り込み。

以前の大工は、せいぜいチラシを作ればよかったのです。
それが、現在の大工は、HP作成の他、インスタ、LINE、YouTube…あらゆる媒体に広告を出さなければ生き残っていけません。

そして、成果をあげることを求められます。
 

おまけに、上司はどうすれば成果をあげられるかは教えてくれません。
だって、上司もわからない(正解がない)のですから。
ただ、成果をあげることを求めてくるのです。


いかがでしょうか?
この数十年で、ずいぶん社会という「環境」が変わったのをご理解いただけたでしょうか。


そして、ここがポイント。
冒頭の、190㎝で運動が苦手な女性の例を思い出してください。

彼女がスポーツの強豪校にいるのと、研究機関で好きな研究に没頭している例を。
同じ特性を持っていても、環境によって気にならない場合もあれば、生きづらさにつながる場合もある。

ですから、現代の日本社会はグレーゾーンの人には、とても生きにくい社会となってきたのです。
これが、大人の発達障害が増えてきたと考えられる一番の理由です。
 

大人の発達障害理解のおすすめ本

大人の発達障害 グレーゾーンの人たち


自身がうつ病を患い、発達障害と診断された医師 林 寧哲氏の著書です。
大人の発達障害を中心に診療なさっている方で、ご自身の経験から、気持ちに寄り添ってくれる医師として評価が高いです。

こちらの本は、​イラストや実例も豊富で、わかりやすく書かれています。
「まさか自分が発達障害なんて思ったこともなかった」という方など、初めて発達障害を理解しようとなさる方におすすめです。

『グレーゾーンの人たち』とあるように、ご自身で「発達障害だと思ったのに、発達障害とは診断されなかった」という方も目を通してみるとよいでしょう。
 

マンガでわかるアスペルガー症候群の人とのコミュニケーションガイド


成人期ADHDやASDをはじめ、幅広く心の病をみている精神科医 福西勇夫氏の著書です。
『カサンドラ症候群とは?原因・対処法・カウンセリング事例紹介』で紹介した『発達障害の私が夫と普通に暮らすために書いているノート』の監修者でもあります。

タイトルにある通り、家族や職場など、身近にASDやASDが疑われる人がいる方におすすめの本です。

マンガなので、気軽に読めるのもよいですね。
 

「大人のADHD」のための段取り力


「のび太・ジャイアン症候群」でADHDを日本に紹介したことで知られる精神科医 司馬理英子氏の著書です。

ADHDの方が抱える困り感や、その具体的な対処法がたくさん紹介されています。
イラストも多めなので、読みやすいかと思います。

ADHD傾向のある私もひそかに参考にしています。
 

職場にいるメンタル疾患者・発達障害者と上手に付き合う方法


著者は、日本で初めての障害者のための労働組合「ソーシャルハートフルユニオン」の書記長 久保修一氏。
発達障害の当事者ではなく、周囲の方向けの本です。
タイトルには職場とありますが、夫婦関係に悩まれ例る方にもおすすめできる内容です。

発達障害で苦しんでいる当事者の方はたくさんいます。
そして、発達障害の方と接して疲弊してしまっている方も、実はたくさんいるのです。
そんな発達障害の方と接する心優しい方にぜひおすすめしたい本です。
 

「発達障害かも?」とお悩みの方の相談先・対処法


この記事をご覧になって「自分は発達障害かもしれない」と感じた方もいらっしゃるでしょう。

心当たりがある場合には、どこに相談すればよいでしょうか?
 

病院


子どもでも大人でも、発達障害を診断できるのは医療機関のみです。
受診するのは、「精神科」あるいは「心療内科」となるでしょう。
「発達障害専門外来」のある病院もあります。

ただし、発達障害、なかでも大人の発達障害を診られる医師は、まだ少ないのが現状です。

実際に、私のクライエントの中にも、発達障害を見過ごされて「うつ病」と診断されたり、反対に「視線恐怖症」の方が発達障害と誤診断されたケースもあります。

ですから、インターネットや後述する発達障害者支援センターなどで、大人の発達障害に対応できる病院か、事前にしっかりと情報を確認することが大切です。
 

就労支援機関


発達障害の就労に関しては、さまざまな相談先があります。

  • 発達障害者支援センター(利用は無料。本人だけではなく、周囲の人も利用できます)
  • 地域障害者職業センター
  • ハローワーク
  • 地域若者サポートステーション
  • 就労移行支援事業所
  • 発達障害者の当事者団体
  • 民間の発達障害就労支援機関

相談・職業紹介・就労セミナー・SST(ソーシャルスキルトレーニング)など、各機関で様々なサービスを提供しています。
 

心理カウンセリング

  • 人間関係がうまくいかない
  • 何度もミスを繰り返す
  • がんばっているのに認めてもらえない

このような出来事が繰り返されることで、

  • 誰にも理解してもらえないと孤立してしまう
  • 努力不足かもしれないと思い、何とかしようと頑張りすぎてしまう
  • 心身ともに疲れ果ててしまう

このような「生きづらさ」を抱えてしまう発達障害の方は、心理カウンセリングを利用してみましょう。

心理カウンセリングで発達の凸凹という特性は治りません。
けれども、心の状態は変えることができます。

たとえば、受け止め(認知)。
冒頭の190㎝の女性の例を思い出してみてください。

190㎝という身長(特性)は変わることはありません。
けれども、その身長をスポーツで活かし強みに変えたり(リフレーミング)、好きな研究に没頭することで気にならなくなる(意識のフォーカス)など、その特性を持ったまま、さまざまな生き方をすることはできるのです。

あなたにどんな可能性があるか、どのような生き方が出来るかを積極的にサポートするのが心理カウンセリングです。

また、そもそも抱えている苦しみをわかってもらえるだけで、どれほど心の負担が軽くなることでしょう。
 

当社のホームページ


ホームページに発達障害の記載があるなど、専門性をもった心理カウンセラーを探し、これまでしてこなかった新しい生き方を探してみましょう。
 

発達障害の人との接し方でお悩みの方の相談先・対処法


発達障害の当事者に比べ、周囲にいる人が相談できる先は限られているのが現状です。

私自身も実際に、職場でのうつ病発症や二度の離婚の経験をふりかえると、発達障害の方(ただし本人も自覚なし)に振り回されていたことに今となって気づきます。

しかし当時は、そのことに気づきもしませんでした。


ですから、大切なことは、やはりどこかおかしいと気づくところからでしょう。
そして、「あの人は発達障害かも?」と思ったら、本やネットなどを活用して調べてみる。

一昔前ならお金を払っても得られなかったような情報がたくさん得られます。
有効な対処法もいくつも見つかることでしょう。
 

カサンドラ症候群という言葉を初めて耳にする方、あるいは聞いたことはあっても詳しくはわからない方は、カサンドラ症候群についても調べてみるとよいでしょう。

<関連記事>カサンドラ症候群とは?原因・対処法・カウンセリング事例紹介
 

当社の事例・お客様の声

実際に当社でカウンセリングを受けた方のお声をご紹介します。
 

「否定も、過度な肯定もない、絶対的な安心感!」


Q1. 他にもカウンセリング施設がありますが、なぜ当店にご予約くださったのですか?

HPの他の相談者さんの声を見たのと、女性のカウンセラーを選べたので予約しました。
 

Q2. 実際にカウンセリングを受けてみていかがでしたか?

まとまっていない話でしたが、絶対否定せずに、また過度に肯定されることもなく、プレッシャーを感じずにそのままの気持ちを話すことができました。

ホワイドボードでまとめて下さったことも、自分の気持ちが見えて良かったし、すっきりしました。

自分の悩みはこんがらがって「もう解けないんじゃないか」と思っていましたが、受けてみてそこまで複雑なことじゃなかったんだとすごく楽になりました。

これからもっと自分の良いところを見つけていけそうだと感じています。ありがとうございました!!

北海道檜山郡江差町 20代女性

 


「カウンセラーさんの力って凄い!」


Q1. 他にもカウンセリング施設がありますが、なぜ当店にご予約くださったのですか?

顔や名前が掲載されていたり、レビューを読んで、相談することに決めました。
 

Q2. 実際にカウンセリングを受けてみていかがでしたか?

自分1人では解決策に至れませんでしたが、対話を通して一緒に問題を解決しているという感覚がありました。

自分が何で悩んでいるのかすらもあまりよく分かりませんでしたが、親切に話を聞いてくださり、自分でもよく考える事が出来ました。
 

Q3. その中でも特に印象に残っていることがあれば教えてください。

私が1つのことにとらわれすぎていて、そのことに振り回されているというような印象がありました。

でも、人との関係の上ではそればかりではなく、他にも身につけるべき事があるというに気が付きました。
 

Q4. その他カウンセラーへのメッセージがありましたら、ご自由にどうぞ。

真摯に話を聞いていただきありがとうございます。
今日話をしていたら感じたのですが、私は解決する事以上に自分の話を聞いてくれる人を求めていたのだと思います。
そう感じたのは、話をしているうちにだんだん自分の気持ちが楽になっていったからです。

話をしている時には、寂しい時の自分の気持ちがよく分からなかったりしました。
カウンセラーさんの力って凄いなと思いました。

本当に話を聞いていただけてよかったです。

北海道函館市 K・N様(女性)

まとめ


大人の発達障害について、

  • なぜ大人になるまでわからないのか?
  • 発達障害の当事者の対処法
  • 周囲にいる人の対処法

についてお伝えしてきました。
 

悩み始めると、同じことを何度も繰り返し考えて、心の調子を乱してしまいます。
本、インターネット、そして専門家。
周囲の力を上手に用いながら、よりよい生き方、関係性を見つけていってください。


あなたの心に笑顔が戻る日を、願っております。

 

執筆者:カウンセリングMaNa 心理カウンセラー 高島 昌彦