【高島心理カウンセラーのつぶやき】

命の恩人

高島心理カウンセラー

2017/11/29
 

彼女と出会ったのは、もう20年前のことです。
段ボール箱に1匹だけ入れられ捨てられていました。
目も完全に開いてはいなかったので、おそらく生後1カ月も経っていなかったことと思います。

それまでの私はイヌしか飼ったことがなく、ネコは身近な存在ではありませんでした。
どちらかというと苦手な存在。
日中の細い黒目がどうも好きではありませんでした。

とはいえ、段ボール箱に入った彼女。
見つけたのはちょうど雨降りの日で、放っておいたらこのまま死んでしまいそうな雰囲気。
当時は学校に勤めていたので、教職員か生徒の誰かが飼うだろうと
甘い予想を立てて、連れ帰ることにしました。

学校に写真を持っていくと、案の定かわいいと皆が口々に言います。
ところが、誰一人飼ってくれる人はいません。
私はアパート暮らしなので飼うわけにはいきません。
そうこうするうちに1週間が経ち・・・。

結局飼ってくれる人は現れず、かといってそのまま捨てるわけにもいかず…。
仕方なくアパートの管理者に何とか頼み込み、やっとのことで飼う許可をもらいました。
許可と言っても黙認のような形でしたが。

そのうえ、彼女はずいぶんと劣悪な環境にいたのか健康状態もよくなく、
何度も動物病院に連れて行きました。
目、耳、皮膚、おなか…いたるところに寄生虫がいました。
目ヤニや鼻水、下痢も止まらず、このまま死んでしまうのかなというほど弱々しい状態でした。

その後すっかり元気になってくれましたが、
結局好きでもないネコを飼うために、ずいぶんと骨を折りお金も使いました。
彼女にとっては、私はまさに命の恩人でしょう。
ずっとそんな思いでおりました。

 

そして年月が経ち、気がついたら私はうつ病を患っていました。
とても苦しい日々が続き、何度も自殺を考えました。
あと1歩前に進んだら確実に死ねるというところまで行ったこともあります。
それでも、どうしてもその1歩を踏み出せなかった。

怖かったのではありません。
むしろこのつらい状態から逃げ出せると思うと、その1歩は甘美にすら感じられました。
それでも、その1歩を踏み出せなかった。

「おれがいなくなったら、あいつはどうなるんだろう・・・?」

 

私はいまだに、私は彼女にとっての命の恩人だと思っています。
ところで、彼女はどう思っているんでしょう?
やっぱり私のことを命の恩人だと感謝してくれているんでしょうか。
それとも、自分こそ命の恩人だと思っているんでしょうか。

彼女を見ていると、たぶんそのどちらでもないんです。
過去を懐かしみもしなければ、未来に不安になるでもない。
ただただ今を感じ、今を生きているんです。
そんな彼女はいつも幸せそうです。


執筆者:カウンセリングMaNa 高島 昌彦

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