【コミュニケーション】

「過去」のデータと「現在進行形」の事象

丹下坂心理カウンセラー

2019/12/9

私は中学、高校そして、大学時代とバレーボールに興じてきました。もっとも、大学時代は、学業の方で忙しかったため、ほとんど幽霊部員ではありましたが。

このバレーボールと言うスポーツは皆さんご存知のように、1チーム6人の選手がネットを介し、相手チームにボールを打ち合うもので、3回以内にボールが返球できない、もしくは、ボールが床に落ちると1点獲得という競技です。

「相手のセッターは誰へトスしようとしているのか。」
「相手のアタッカーはどこへボールを打とうとしているのか。」
「サーブはどこを狙っているのか。」

常に、ボールが動く前に、相手の動きを予測して動いています。

サッカー、野球、テニス、卓球、アイスホッケーなど、相手と直接対戦し、勝敗を決める対人競技では、この予測、いわゆる「先を読む」という技術が勝敗を分けると言っても過言ではないでしょう。

競技にもよりますが、その予測にかける時間は、ほんの数秒程度。中には、1秒を切るスポーツも少なくないはずです。

では、この瞬時の予測を、選手はどこで判断しているのでしょうか?

ボールを使う競技であれば、そのボールの軌道(高さ、角度、回転)などから判断している選手もいるでしょうし、相手の目線、体の向きなどから判断している選手もいるでしょう。

このプレー中の瞬時の判断は、実際に試合中に行われていることなのでしょうか?

「当たり前じゃないか!」
「実際にボールが動いてる中で選手がプレーしてるんだから、その判断は試合中にしているに決まっているじゃないか!」

体は、正にその通りでしょう。
判断して、そして、体が動く。

その判断は、どこで為されているのか?
ということです。

バレーボールの練習では、この軌道で、あの位置にボールが上がったなら、アタックはおおよそこの位置にくる。
こういう練習を何回も何回も繰り返しているわけです。
同じアタッカーが打つのですから、そのアタッカーの癖も頭に入っていることでしょう。

そうやって、何時間も、何カ月も、何年もかけて練習したデータは、頭に蓄積され、体に染みついていきます。

「体が勝手に反応した」
「ボールがゆっくりに見えた」
「相手の動きが読めた」

プロのスポーツ選手が試合後、インタビューでこう答えるのを聞いたことがあると思いますが、これは、考えなくても体が勝手に動くまで、膨大な練習を積み重ねた結果なのです。反射神経に近い動きと言ってもいいかもしれません。

では、これは、プロのスポーツ選手に限ったことでしょうか?

初対面の人と会うとします。
誰もが緊張しますね。
会ったことがないため、どんな特徴をもった人なのか、過去のデータから予測することができません。そして、会った瞬間に、
「優しそうな人だ!」
「何だかとっつきにくそうな人だ!」
と瞬時に判断するのです。

それは、自分の頭に中に蓄積されている「優しい人」に分類された内容と合致する点が多かったからです。
やわらかい声のトーン、笑顔、優しい目など、自分の「優しい人フォルダ」に分類された項目と次々一致していきます。そして、
「この人は、優しそうな人だ!」
と判断するわけです。

やがて、この「優しそうな人」と接する時間が長くなるに連れ、ユーモアな面、あるいは、いじわるな面などを垣間見るに従って、その人に対する評価ができあがっていきます。

最初に抱いた「優しい」から、かけ離れていればいるほどギャップが生まれるため、そのギャップを受け容れられず、
「最初は優しそうな人だと思っていたけれど、案外短気よね」
などという評価になっていくこともあります。

スポーツでも、対人関係でも、「先を読む」、「相手の意を汲む」ことは、時にはとても有効な手段と言えるでしょう。
ただ、それは、過去の自分の頭に蓄積されたデータに過ぎません。

「今、この瞬間」、目の前で起きていること、目の前にいる人は、体もこころも常に動いています。
過去の蓄積されたデータとズレが生じた時ほど、まずそのことに気づき、そして、目の前で起きていること、目の前の人をしっかりと感じたいものです。


執筆者:カウンセリングMaNa 丹下坂 愛実

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