【コミュニケーション】

頼る勇気

丹下坂心理カウンセラー

2018/2/20

2月9日に開幕した平昌オリンピックが連日の盛り上がりを見せている。
ある朝、ニュースを見ていると、カーリング女子代表選手のインタビューの模様が放送されていた。

「わかりますか?この違い。
以前は前足のかかとを浮かせていたんですが、今はフォームを修正したんです。」

その説明とともに、<修正前>胸まで深く折り曲げた左足のかかとが氷のリンクから浮いている映像と<修正後>左足全体がしっかりとリンクに接地している映像が映し出された。

かかとを浮かせることによってストーンを投げるスピードが格段に上がるそう。
その勢いで、相手チームのストーンを弾き出すという攻撃的なゲームが展開できるのだそうだ。
一方で、かかとをつけるとスピードは出ないが、ストーンを正確に放つことができるようになるのだとか。
攻撃的という「動」から緻密的な「静」へと、それは大胆な戦略の変更である。

さらにインタビューは続く。

「私がこれだけの決断をできたのは、このチームのメンバーで戦っているからです。チームメイトには、素晴らしい技術を持ったスウィーパーがいます。スピードがない私の弱いストーンを力強いスウィーパーが補ってくれるんです。弱点のある私を得意な技でメンバーが救ってくれる。チームメイトを信頼しているからこそ頼ることができたし、思い切ってフォームを改善する決断ができました。」

彼女は、ただ単に頼ったのではない。
心の底から信頼しているからこそ、頼ることができたのだ。
そして深い信頼を得たチームメイトはそれに応えようと、さらなる結束力を生むことになるはずだ。

仕事へ出かける前の、ほんの数分のインタビューだったが、この時、まさか自分の身に同じようなことが起こるとは知る由もなかった。

数日前から体調がよくないことは薄々感じてはいたが、今日は闘病を続ける母の20回目の抗がん剤投与の日。
病院へ行かないわけにはいかない。
この時期の病院は、風邪をもらいにいくようなもの、体調が悪化しないはずがない。

それでも何とかやり過ごし、やっと自宅へ戻り、家族のために食事の準備。
この頃にはすでに体は熱く、体がきしみ出す。
それでも、「私がやらなければ!」と一人奮闘する。

以前の自分なら確実に、「大丈夫、大丈夫!全然平気!」と誰にもお願いせず、黙々と一人で作業を続けていただろう。
ふと、朝のカーリング選手のインタビューが頭を過った。
 「信頼しているからこそ頼ることができた」

「体調悪い。悪いけど、あと頼む」

母は俄然、元気を出した。
他の家族もすすんで協力し始めた。
その姿は、「待ってました!私の出番!」と言わんばかりに。

頼ることは自分のできることを放棄することではない。
頼られた側はむしろ「頼ってくれた!」と喜ぶ行為なのだ。
自分の存在意義を確認できる時間と言っても過言ではないのだろう。

目の前の現実は「ステージⅣ、癌と戦う母」という悲しい現実。
でも、そんな悲しい時間の中にも、こんなにも心が温まる瞬間があったなんて。
頼ることの勇気を教えてくれた母、そして笑顔で応えてくれた家族に心からの「ありがとう!」

もう少し、風邪をひいていようかな・・・


執筆者:カウンセリングMaNa 丹下坂 愛実

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