【コミュニケーション】

「でも…」の気持ち

高島心理カウンセラー

2019/3/26

妻:「うわあ、いいお天気!」
私:「でも、暖かいね」

我が家の台所からは、横津山系が見渡せます。
日の出前後は魔法の時間。
空や山頂付近の雪面が、ピンクや青、紫、オレンジと刻一刻と変化します。
朝起きるとその景色を眺めるのが、何となく夫婦の日課となりました。

冒頭部分は、「おはよう」のあいさつの後に交わされた何気ない会話。
違和感を覚えた方はどれくらいいるでしょうか?

妻:「うわあ、いいお天気!」
私:「でも、暖かいね。」

そうです。
「でも」が余計なんです。

そのときの私の思いは、別に「いいお天気」を否定しているわけではありませんでした。
むしろ、肯定していた思いの方が強い。
「いいお天気」を肯定したうえで、付け足しとして「暖かい」。

そうなると、「でも」が余計なはずです。
つまり、自分が感じていることを正確に伝えるなら、
「そうだね。いいお天気だね。それに、(天気がいいから)暖かいね」
となるはずなんです。
なのに、口をついた言葉は、
「でも、暖かいね」

このことがあってから、自分の口をつく「でも…」が気になるようになりました。
すると2種類の「でも…」があることに気づきます。

一つ目は逆説の「でも」
妻:「うわあ、いいお天気」
私:「でも、西の空は真っ暗だよ」
このような場合。

私が伝えたいのは、いいお天気ではないということ。
この逆説の「でも」はいいんです。
思いと言葉が合っている。
 

ところが二つ目。
順接の「でも」
冒頭の会話のような「でも」です。
「でも、暖かいね」の「でも」。
私が伝えたいのは、いいお天気だし暖かいということ(のはず)。
つまり、否定していない「でも」。

意識して聴いていると、会話中に、この順接の「でも」が実に多い。
私もですが、他の人も。
中には、話すたびに出るといってもいいくらい多用する方もいます。
話を否定しているわけでもないのに、
「でも…」
「けど…」
「いや…」と。

私はそれほど多用しているわけではありませんが、それでも自分で思っている以上に口をついてくる。
文法的には不必要な、順接の「でも」が。

そしておかしなことに、この順接の「でも」を使わないようにするとなんとも話しにくい。
意味的には必要ないか、むしろ誤解を与える可能性もあります。
そもそも無自覚に他人を否定するというのは、コミュニケーションとして褒められたものではありません。
だから使わない方がいい。
なのに、気ままに会話をしているとついつい口をついてくる。
いささか自己嫌悪に陥っていたかもしれません。

そんなある朝のこと。
妻が私を起こしに来ました。
そして、台所の窓へ。
そこには、山の雪面がピンクに輝く、素晴らしい眺めが待っていました。

妻:「いいお天気。アルプスみたい」
私:「うん。本当だ・・・」

私はその光景にしばらくの間、息をのみました。
そして、その後にひとりごとのようにつぶやく自分がいました。

私:「うーん、暖かいなあ」

気づきました?
「でも」がないんです。

妻:「いいお天気。アルプスみたい」
私:「うん。本当だ・・・。うーん、暖かいなあ」

冒頭の会話と一体何が違ったんでしょう。
実は、この時は「いいお天気」をこころから感じていたんです。
相手の言った「いいお天気」を100%受け容れる。
こころからの同意。
相手の思いとの同調。
十分に同調したその先に、「暖かい」という気づきがあった。
それは、相手に強いているのではなく、単なる気づき。

一方、冒頭の会話。
妻:「うわあ、いいお天気!」
私:「でも、暖かいね」

実はこの場合、相手の思いには今の例程には、十分に同意していなかったようです。
同意したのは、天候の話題をするということ。
あなたが天候の話をしたので、私もあなたの設定した土俵に立ちますという同意。

「天気がいい」には否定も肯定もせず、相手の持ち出した天候の話題に乗ることで、相手の意を汲んだとする。

そして、ここからがポイント。
天候の話題について私が感じているのは、暖かいということ。
とにかくそれを伝えたい。
平たく言えば、「聞いて!」ということ。
つまり、相手が始めた会話の主導権を自分が持ちたいという意思表示。
突き詰めると、暖かいかどうかもどうでもよいのかもしれません。
自分が会話の主役でいられれば。

順接の「でも」の役割。
それは、「聞いて!」ということ。
自分が会話の主役でいたいということ。
つまり、自分をわかってほしい、大切にしてほしいということです。

そうなると、順接の「でも」を口にしない方法も見えてくる。
相手の思いをじっくり受け止めた後に、自分の思いも聞いてもらえばいいんです。
何も相手の思いに自分の思いをぶつける必要はない。

「あなたのためにここにいます」
ティク・ナット・ハンが教えてくれた言葉。
大切な人と過ごす時間、この言葉を唱えていると、順接の「でも」が自然と口をつかなくなります。
そこには、互いを主張し合うのではなく、互いを理解し合う関係が生まれます。

会話には関係性が表れます。
会話が変わると関係性が変わります。
同様に、関係性が変わると会話も変わっていくのでしょう。

関係性は、自分のあり方が決めます。
「あなたのためにここにいます」
大切な人と過ごすとき、いつもこころに留めておきたいです。


執筆者:カウンセリングMaNa 高島 昌彦

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