【丹下坂心理カウンセラーのつぶやき】

小さな天使からの贈り物

丹下坂心理カウンセラー

2017/12/07
 

あっ!ぶつかるっ!

一瞬の出来事だった、はず。
しかしそれは、何十秒にも感じられた。

交通事故に遭ったのは4月の下旬、ゴールデンウィークがこれから始まるという、
軽いジョギングをしている日の朝だった。

その日はいつもより少し早めに起き、いつもと違うルートを選んだ。
車通りが比較的少ないいつもと違う景色は、私のまだ寝ぼけまなこの目を覚ますには
十分刺激的だった。

走り始めて30分ほど経ったろうか。
さらに自然を求めて、郊外まで延びる大通りを横断しようとした正にその時だった。

左折してきた黒い車に気付いた時には、もうすでに遅かった。
走っている車もそして人間も、急には止まれない。

タイヤが左足を通過するのをまじまじと見ている。
続いて右足。
ゆっくりと、それはタイヤが足の感触を確かめるかの如く、
限りなくゆっくりと足の上に乗り上げていく。

「わかった。乗っかるなら乗っかっていい。そのかわり、早く通り過ぎてくれ。頼む。これ以上苦しませないでくれ」

意識が遠のいていく中でタイヤの重みを感じながら、そう心の中で叫んでいた。

全治3カ月の傷も少しずつ癒え、さあこれからリハビリ開始!と思った矢先、
またもや不運が足早にやってきた。

尾てい骨骨折。

8月中旬、お盆まっただ中のことだった。
楽しいはずの家族旅行が一瞬のうちに暗転する。
またもや車いす生活に戻る。
こうして1年の半分を棒に振ることに。

しかし、マイナスのことばかりではない。
家族の懸命の介護と励ましの言葉
友人たちからのやさしい言葉
見ず知らずの人たちからの温かい言葉
体は嫌というほど痛めつけられたが、それ以上の人のあたたかさに触れることができた。

「12月に入り、今年もあといよいよ残すところ1ヶ月だね」
家族とそんな話を何気なくしていた夕食後、甥っ子がぽつりと、一言声を発した。

「まねこ(甥っ子だけが私のことをこう呼ぶ)、来年はきっといいこといっぱいある年になるよ」
心が一瞬のうちに温かくなった。
と同時に、奥底から熱いものが込み上げてきた。

彼にもこの一年たくさんのことがあったはずだ。
学校、習い事、決して彼を取り巻く環境は少なくない。
それでも、見ているテレビの話題に触れるでもなく、自分のことを振り返るでもなく、
今はこうして元気にしている私のことを気遣ってそう言ってくれたのである。

「まねこ、来年はきっといいこといっぱいある年になるよ」
来年だけじゃない、この先ずっと、この言葉に支えられることだろう。

「そんな優しいことばをくれる君にも幸あれ!」


執筆者:カウンセリングMaNa 丹下坂 愛実

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